H2
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💡 アマゾンでのレビュー
「タッチ」とは似て非なるもの。
読む前は「タッチ」で一度野球を題材にしているのに、また同じ野球の漫画なんか描いて、作者は「自己模倣」でも始めたのか?・・・なんていう先入観が立ってしまいました。で、読み始めたんだが・・・「タッチ」とは全然違うよ!何よりも野球が完全に話の中心となった。タッチでは恋愛がメインで野球はあくまでも小道具だったのに。こちらは野球と恋愛の比率は「6対4」もしくは「7対3」でタッチと完全に割合が逆転した。直球の一本やりで三振の山を築いていた「上杉達也」から幾星霜、比呂は変化球も使いこなすようになったし。タッチで「案山子扱い」だったチームメイトにも光が当てられ、連帯感を持たせる意味でも説得力が加わった。特に最初はスパイとして入部してきたはずの「島」と「大竹」の2人が次第に野球の面白さを知り、試合で活躍するたびにチームメイトや観客から認められる過程で「悪役としての任務」を放棄して、チームの主力となっていくという展開は悪い方向へと行きそうだった2人の運命が好転したという意味で読後感が心地よかった。2人のヒロインと2人のヒーローを用意した「四角関係」が最後までカップリングの着地点を読ませず、野球の試合内容とは違う意味でも緊迫感が継続されて良かった。自分は・・・最後まで比呂がひかりとくっ付くかもという可能性も捨て切れなかった。でもよくよく考えると、ひかりにとっての比呂は「弟」の位置付けなんですよね。度々、比呂を男として意識しつつも、最後には「血の繋がらない家族の位置」へと還ってきたように思う。そして比呂のひかりへの初恋も・・もうずっと前に終わっていた。ひかりの恋人にして比呂の最大のライヴァルの英雄は・・・ひかりと付き合いながらも常に「ひかりが本当に好きなのは自分ではなく比呂ではないのか?」という疑念に囚われていた。思えば、このお話は英雄にとっては自らの心の疑念を晴らすための戦いの軌跡でもあったわけだ。最後の夏の甲子園を前にしての比呂とひかりのデートは映画だった。帰り道で、母親を亡くしたばかりのひかりは別れ際に比呂に言う。「比呂と幼なじみでよかった」「さよなら」と。このセリフでひかりが比呂ではなく英雄を選んだのだと思った。幼い頃から「弟」のように思い、そしていつの間にか比呂を「男」として意識するようになったとき、ひかりにはすでに英雄という恋人がいた。先に「女」となったひかりに遅れて「男」になった比呂が、もしも、もう少しだけ早くひかりに男を感じさせていてくれたなら・・・・・?果たして2人の仲はどうなっていた・・・?・・・・・・・・・・・・おそらくひかりが英雄ではなく、比呂と恋人になった未来もあったことだろう。けれど、その未来は現実のものとはならなかった。高校三年生の夏の甲子園の準決勝でついに対決する比呂と英雄。それを見守るひかりと春華。結果は比呂の勝利・・・も、勝った比呂とそれを見守ったひかりの目からは涙の雫がこぼれ落ちる。お互いが互いに対する恋心にピリオドを打ったことを悟った、ストーリー中でも屈指の名場面だ。英雄は比呂との勝負に負けて悟った「ひかりが最も必要としているのは自分で、そんなひかりのことを誰よりも愛しているのも自身だ」と。ひかりも気付いていた。「最初から選択の余地(自分と比呂が結ばれる可能性)なんて無かったのよ」と。ひかりと比呂は恋人にはなれない。「そうなるチャンス」をとうの昔に過ぎ去ってしまっていた・・・・。そして失われた時間を取り戻すことは決して叶わない・・・・。かくて、十年近く英雄の心を曇らせた暗雲も晴れ、物語は終局する。準決勝を勝ち抜いた千川ナインはいざ決勝戦へと進む!その比呂の傍らには、彼にとっての「恩人のひとり」といってよい春華の姿があった。描かれないままに終わった決勝戦だが、比呂の行く未来は広がる夏の青空そのものだった。「結ばれる可能性も高かったのだが、ボタンの掛け違いで結ばれずに終わった2人。でも、決して不幸ではない」この作品の最大のセールスポイントは「ひかりと比呂が両想いなのに、結ばれることなく終わる」という点。だからこそ「出会いの難しさ」とか、「人生におけるタイミング」、「思春期における女子の男子に対する精神的な成長での優位性」等が感じられて、とてもせつないのです。でも決して不幸と思えないのは2人は恋人にはなれなくとも「家族」という立ち位置(直接的な血縁関係はないが、実質2人は「姉」と「弟」だった)が保証されているから。だから、「読後の後味が悪くならない」のですよ。安易に両想いが結ばれてメデタシメデタシ・・・が多い中、これは異色かつ特筆ですよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お見事!
根性論精神論とは一線を画す
あだち充『H2』は二組のヒーローとヒロインを描く高校野球漫画である。比呂(ヒーロー)、英雄(ヒーロー)の2人のヒーローがいる。1990年代に『週刊少年サンデー』に連載された。作者は『タッチ』などの野球漫画が有名であるが、本作品の連載前はSF時代劇漫画『七色とうがらし』という異色ジャンルの作品を連載していた。満を持して得意分野の野球漫画を連載したことになる。『タッチ』は昭和のスポ根作品とは異なるスマートな作品である。これに憧れて野球部に入り、実際との落差を感じた人もいるのではないか。本作品も根性論精神論とは一線を画す。何しろ医師の診断によって主人公達は野球を止めるところから物語は始まる。さらに注目は悪役の投手が腕に少しの違和感を抱いて降板することである。チームにとっては勝つか負けるかの瀬戸際であり、エースに続投して欲しいところである。しかし、投手は大事をとって降板する。監督にとっては高校野球を勝ち進むことが目的であるが、投手にとっては高校野球が終わりではなく、選手生命は高校卒業後も続く。真っ当な思考であるが、悪役のエゴ的に描いたところに20世紀の限界を感じる。21世紀の現実は20世紀の漫画を追い越した。2016年夏の甲子園のキーワードはエース温存であった。複数のチームがエース投手を先発させず、温存させる戦術を採ったものの、序盤で大量失点して敗北した。このためにエース温存は失敗戦術と揶揄されがちであるが、選手の肩の負担を軽減するためには大切なことである。ここに昭和の根性論精神論から脱却した時代の変化がある。エース温存で敗退したチームに清々しさを覚える。
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2022-07-03 13:07:名無しのユーザー/uid325さんによって、参考画像が変更されました。